2010.04.01
スタイリストのお引っ越し
一体、引っ越した場所の、引っ越した家に、奇跡のように戻るなんて
あるのだろうか・・・
このあっという間の引っ越しは、なんなのだろう。
原宿あたりに住み始めてから、神宮前3丁目、神宮前2丁目、千駄ヶ谷と
それぞれ15年ぐらいづつ住んで、のっぴきならない理由で駒場の一軒家に
引っ越したのが2年半前だった。
お世話になっていた大家さんが亡くなって、持ち主が変わったのだ。
マンションの中でおとなしくしてはいられない犬を飼っていて、
小型犬ではないので、とりあえず一軒家となった。
いつの時でもそうだが、気がつけば、沢山の宝ものとガラクタを
引きずって生きている。
思えば、3回の引っ越しでどれだけの物をあちこちの友人に送った
ことだろう。
その宅急便代がいつも5万円を越した。
別れ難かったのがこの庭。
犬のココは庭はすっかり自分の領分だと思い込んでいた。
忙しい私にとってもココと一緒に芝生とも雑草ともつかない一角に
寝ころんで空を見上げるのは、ある種、宇宙的な時間とも言えた。
百日紅(さるすべり)の木に花が咲き、つつじが咲き、梅や柿の実が
なった。
小さな花が地面をうずめた。
私は庭に布団や洗濯物を干した。
駒場に越して1年と経たない時、ココが病死した。
一軒家が広すぎる。急に千駄ヶ谷の家はどうなって
いるか気になって寄り道した。
もうあの家はなくなってしまったろうか・・・
思いがけず嘗ての家は、リニューアル工事の真っ最中だった。
新しい大家さんにお願いして、私はまた千駄ヶ谷に戻った。
土地が私を呼び戻してくれたのだろうか、それともココの魂か・・・
舞い戻った私の部屋からは、今は誰も住んでいない母屋の風景が見える。
ヒマラヤ杉が風に揺れ、白い煙突とともに空を仰いでいる。
ココはいないけど、毎年咲いていたスズランが今、真っ盛り。
千駄ヶ谷の小道を歩き、100円のチビバスで表参道に出る・・・
この毎日が幸せ。
e-days から引っ越してきました。
よろしくお願いいたします。
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e-days 高橋靖子『パチパチ パーティ』
高橋靖子
日本のスタイリストの草分け的存在。現在も、広告、CMなど第一線で活躍中。71年、ロンドンで山本寛斎氏とファッションショーを成功させ、その後、「ジギー・スターダスト」期のデヴィッド・ボウイの衣装を担当。鋤田正義氏によるデヴィッド・ボウイやT・レックスの撮影をアレンジしたことでも知られる。著書に『表参道のヤッコさん』『小さな食卓 おひとりさまのおいしい毎日』『わたしに拍手!』などがある。

