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高橋靖子

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2011.05.27

HOTEI 30th ANNIVERSARY 代々木第一体育館

東大寺、武道館に続き、今回の代々木第一体育館、大阪城ホールは、
私にとっては3回目の衣裳担当だった。
リハーサルの時、「私、衣装の写真が一枚もないの。撮ってもいいですか?」
と布袋さんに聞いた。
布袋さんはびっくりしたように「えっ!そうだったの。もちろん撮っていいよ」
と言ってくれた。

そうなのだ。
東大寺のときは無我夢中で、そんなことは思いつきもしなかった。
武道館のときは、やっぱり余裕がなくて、
「きっと誰かが撮ってくれてるから、後でもらえばいい」と思った。
それで今回は、仮縫いの様子から、出来上がりまで、撮っておきたいと
思ったのだ。
ところが、現実には、またもやそれどころではなかった。
布袋さんには、常にテレビクルーや、カメラマンがついている。
その中に若い女性カメラマンがいて、私に話しかけてくれた。
私は彼女にそっとお願いした。

image002.jpg 撮影:山本倫子

当日、リハーサルのために、布袋さんが楽屋を出た。
さまざまな撮影クルーが布袋さんを取り囲む。
私は長年の習性で、2、3歩引き下がった。
その瞬間、布袋さんがぐっと私を引き寄せた。私はカメラマンの
山本さんのほうを見つめた。
この間、2、3秒の出来事だった。
布袋さんの思いやりと、山本さんの素早い反応で、このお宝写真が
私のものになった!

長いリハーサルがはじまった。
こんなに丁重に、全てをやってしまって、本番は大丈夫なのだろうか、
と思うほどだった。
この空っぽの巨大な空間に、まもなく人々が埋まり、熱狂が始まるのだ。
びっしりと凝縮された時間の経過を体験できるのも、スタイリストという
役徳の一つだ。
休む間もなく、本番の準備にはいった。
メイク完了。ワードローブの友さんが、的確に着付けをする。

白いロングジャケットで登場した布袋さん。
オーディアンスにはどう映っているのかしら。
うねりの中で、私は布袋さんの動きを見つめる。
それに連動して揺れるジャケットを見つめる。
ステージの袖から、会場の一番後ろに回って、みんなのはるか向こうに
見える布袋さんの姿を確認する。

紫のシルクのスーツ。
私好みの色だけど、これも布袋さんの提案だった。
長いセンターステージを疾走する姿をみて、私は衣裳を制作してくれた
中村コスチュームの中村さんと笑顔でうなずきあった。

最後のアンコールは、さりげない白のアルマーニのシャツ。
シルバーの靴と、白いスニカーを並べて、
「どっちにしようかな。ヤッコさんならこっちだと思うけど
僕はこっち!」と決めたスニーカー。
(シルバーの靴は、アフターショウで、関係者に挨拶する時の、
ベージュのスーツに合わせられてました)

予定の時間を過ぎても鳴りやまないギター。
「FLY INTO YOUR DREAM」が終わった瞬間、布袋さんはステージで
がくっと膝をつき、しばし宇宙から帰還する自分を待っているようだった。
私は、聴衆のひとりとなって、ステージの袖で、涙を流していた。

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2011.05.27  |  FASHION

PROFILE

高橋靖子

日本のスタイリストの草分け的存在。現在も、広告、CMなど第一線で活躍中。71年、ロンドンで山本寛斎氏とファッションショーを成功させ、その後、「ジギー・スターダスト」期のデヴィッド・ボウイの衣装を担当。鋤田正義氏によるデヴィッド・ボウイやT・レックスの撮影をアレンジしたことでも知られる。著書に『表参道のヤッコさん』『小さな食卓 おひとりさまのおいしい毎日』『わたしに拍手!』などがある。

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