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高橋靖子

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2011.09.01

うめぼし2011

3月11日以来、日々の暮らしが激変した。
自分の中の「マメな性格」ぐらいの気持ちでやっていた、布団干し、洗濯、
梅干し作りなど、おひさまの中でやっていた家事をやめてしまった。
ご近所の人目を多少気にしながらも、ふかふかのマットや布団の魅力には
抗し切れず、天日に干していた。
洗濯物も毎日せっせと洗ってせっせと干していた。
それが全部、部屋干しになってしまった。
梅干しも、もう作ろうとは思えなくなっていた。
そんなとき、以前ご近所だった梅干し屋のうめ八さんから電話があって、
青い南高梅をいただいたのだ。

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なんだか、心の底からじわっとうれしさが湧いてきた。
梅干しも室内でやってみよう。
幸いなことに私の部屋は一日中どこかの窓から日が差し込んでくる。
いつもの年の五分の一位の量だけど、梅を並べたザルが三日間、ぐるぐると部屋を移動した。
これは朝。

image002.jpg

そしてお昼前後。
夜ならこのクッションに寄り掛かって、ぼーっと テレビを観たりするけど、
お昼頃、三日間家にいるということはほとんどない。
時間を見計らって戻って梅を移動させる。

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そして午後から夕方までは、居間のガラス戸越しに。
狭いベランダにはここ数年間に友人からもらった植木鉢、
母の日に息子からもらった鉢などが並んでいる。

image004.jpg

そして、最後の日、一時間だけ梅をベランダに出した。

私たちが失ったものはこんなものじゃない・・・
私たちがすべき努力はこんなものじゃない・・・
でも、少しでもましな方法で、日々の暮らしを続けたい。


写真の整理をしていたら、数年前の梅干しつくり風景が出てきた。
この帽子も、このTシャツも、このざるも、甕(かめ)も、まだ持っている。
都会の暮らしの中に田舎を滑り込ませることが好きな私も、ここにいる。
でも、もうこの風景の中の空気は戻らないだろう。
この小さな風景の中で、あとどれくらいか生き続けて、未来の人たちのための
選択を考え続け、ときには行動する、まだ、あきらめてない私がいる。

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2011.09.01  |  FASHION

PROFILE

高橋靖子

日本のスタイリストの草分け的存在。現在も、広告、CMなど第一線で活躍中。71年、ロンドンで山本寛斎氏とファッションショーを成功させ、その後、「ジギー・スターダスト」期のデヴィッド・ボウイの衣装を担当。鋤田正義氏によるデヴィッド・ボウイやT・レックスの撮影をアレンジしたことでも知られる。著書に『表参道のヤッコさん』『小さな食卓 おひとりさまのおいしい毎日』『わたしに拍手!』などがある。

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