2010.06.15
世界的哲学?の話
彼女達の事を理解して欲しい。
彼女達のつぶやきを聞いて欲しい。
毎度ばかばかしい話を一席。
影響を受けたアルバムとなると無数にある。
それこそ日替わりでコロコロと変わるほどあるのです。
インタビュー等で聞かれた場合などは、
相手が何を聞き出したいのか推測しつつ
それより少しだけ意外な作品をあげたりもします。
好きなアルバムとなるとさらに無数にある。
もはや自分の所有するもの全てが好きなのでは、と思うほどあるのです。
ただ、このアーティストだとこれが一番好き!みたいなものは
概ねそのアーティストのファンの方々と意見が一致するようです。
時には例外もありますが、、、。
しかしながら、これからも未来永劫、僕にとって
このアルバムを初めて聴いた時の衝撃を超える事はないと思います。
米国はニューハンプシャーが産んだ20世紀の偉大なバンド=シャッグスの
「Philosophy of the World」(直訳すれば世界の哲学?う~む、深い)。
The Shaggs. Better than the Beatles - even today. Frank Zappa
前回の主役のフランク・ザッパをして「ビートルズより重要」と
言わしめたと聞き、いつか聴いてみたいと思っていました。
しかし出会いは突然にやって来た。当時の日課の「フリージャズ散策」の
ために立ち寄ったディスク・ユニオンで遭遇したのです。
店の奥にジャズ・コーナーがあったので手前のロック&ポップス・コーナーを
素通りするはずが、その日は奇妙な生き物のジャケットに目が奪われてしまったのです。
するとジャケットにはシャッグスと書いてあるのです!
「うひょー!シャッグスってCDになってたんだぁ~」と小躍りして購入。
これまたいつもの日課でそのまま吉祥寺の喫茶店「くぐつ草」で
コーヒーを飲みながらパッケージを空けてアートワークを楽しむ。
と言っても当時のCD(とくに再発もの)はアートワークもたいした事も無く
むしろ楽しみはライナノーツを読む事でした。
僕の買った再発シャッグスのライナーは大鷹俊一氏によるもので、その中で
「それにしても、今初めてシャッグスを聞くというキミは、
なんて幸せなんだろう。どんな気分ですか?」
という言葉で「脳内シャッグス」はピークに。
思えば「くぐつ草」やあるいはこれまた吉祥寺の老舗の喫茶店「エコー」で
どれだけ「脳内アルバム」が産まれた事か(笑)。
大概は「脳内モノ」はおどろおどろしくてアヴァンギャルドの金メダルみたいに
脳内再生されているのですが、いざ家に帰ってリアル再生してみると
「おや?思っていたよりソフトだぞ」とか「これって民謡みたい」とか。
それはオーネットしかりアイラーしかり。
あるいは僕の中ではクラフトワークでさえも彼らの同郷出身の
DAFばりのビートビシビシのものだと思い込んでいたので
はじめて「アウトバーン」を聴いた時には肩すかしを食らったような気がしました(笑)
しかし考えてみると、この脳内ギャップが実は楽しいから
音楽を聴いてきたような気もします。
近年、僕はこのギャップが少ないものばかりを手に取る傾向にあるので
結果、買ったは良いがその後あまり聴かない、という事が多い気がします。
、、、話が横道にそれました。
さて、そのシャッグスを初めて聴いた時にまず最初に僕は爆笑しました。
「へ、下手すぎる、すごい、こんなヘタな演奏聴いた事が無い(笑)」と。
それもそのはず、シャッグスは所謂、親バカ的なオヤジが三姉妹に楽器を買い与え
当時流行のファミリーバンドのようなものを作ろうと思ったのである。
オヤジの「脳内ファミリーバンド構想」だったのです。
面白いのが娘達に買い与えた楽器がバーンズ製のエレキギター×2とドラムス。
う~~ん、トリオ編成ならばベースにすべきか(笑)?
いや、ハウンド・ドッグ・テイラーしかり、もともとマディ・ウォーターズのバンドも
ベース・レスであるからブルース解釈なら正しい選択なのでしょうか(笑)?
まぁ、何を与えても結果は同じだったかも知れません。
彼女達は斬新かつ古典的なアンサンブルを身につけていたのです。
それを人はユニゾンと呼びます(笑)
しかも恐ろしく不安定で不正確なギターとドラムとヴォーカルのユニゾン!
また時には3人が異なるリズムで演奏(ポリ・リズム、笑)も!
彼女達の上達具合は無視してオヤジはスタジオを借りて録音して
200枚プレスしたという。そのほとんどがゴミ箱へ直行したそうですが。
時は1969年、ウッドストックとオルタモントの悲劇の年です。
(ちなみに我が故郷の吉祥寺の駅ビル「ロンロン」はこの年末に
出来上がったそうであります、笑)
しかし!しかしです。彼女達のアルバムはその後いつしかマニア憧れの
コレクターズ・アイテムとなるのです。それは何故か?
彼女達の音を聴いていると最後に感動してしまうのです。
万人が感動する類のものかは判断しかねますが、
少なくとも僕はその時に心が震えるほど感動したのです。
徹底して脱力した空気感とそれでいて感じる音楽そのものの幸福感に。
決して美人ではなく小太りの三姉妹が必死に歌う
あまりにひねりの無いティーンな歌詞にもまた。
例えば、、、
お金持ちは貧しい人のものを欲しがるもの
貧しい人はお金持ちに憧れる
痩せっポチはデブが持っているものを欲しがる
デブは痩せっポチに憧れる
だから、喜ばせることなんて無理よ
この世界を
「世界の哲学」から 訳:中山義雄
今こうしてシャッグスを俯瞰するとデヴィッド・リンチの映画の
一部ではないかと疑うほど良く出来た構成であります。
僕が買ったCDはNRBQというアメリカを代表する愛すべきローカルバンドの
レーベルのレッド・ルースターから出たCD化版(1st&2ndの2 in 1)であるが、
現在はオリジナルジャケットで2枚別々に再発されています。
その1st のジャケット写真をご覧になれば納得されると思います。
ちなみに衝撃作(1st)の5年後にはさらなる衝撃が!
人って上手くなっちゃうんですよねぇ~(笑)。
まぁ、上手いのハードルが地上20㎝くらいですが。
でもはじめて彼女達を聴くなら2枚目からの方が良いのでしょう。
これは個々の免疫力に応じて処方しないといけないようです。
2nd収録のカーペンターズ「イエスタデイ・ワンス・モア」
のカヴァーとかから入ればご安心かと。
プチ情報はその頃には末っ子もメンバーになって4人編成になったとか。
これは人伝えに聞いた話ですが、
その数年後シャッグスが復活ライブのようなものをやったらしいのですが、
その数年間、姉妹は子育てやら色々で忙しかったらしく
その時のライブの出来は酷かったそうです。
まぁもっとも、ある意味これをお客さんは望んでいたのですが。
最後に彼女達は爽やかに「また練習してきます!」と言ったとか言わないとか(爆笑)。
シャッグスがはからずも蒔いた種はパンク~ニューウェーブ~オルタナ~そして現在でも
いつでもどこでも影響を受けた異分子達によって語り継がれる事になりました。
僕が好きなフライング・リザーズ~The 49 Americansやスリッツやレインコーツ。
みんな遠縁の親戚のような感じがします。
さてさて僕はと言いますと、
彼女達を聴いてからしばらくしてひとつの結論を見出しました。
天才と天然は紙一重である。そして僕は天才ではないから努力しようと。
つまり感覚に頼らず、きちんと音楽を勉強し直そうと決心したのです。
今でも不思議な音、聞いた事が無いアンサンブルの楽団を聴きたい!
という欲求に変りはありませんがその探究心の在り方が変わったのでしょう。
ちなみに僕のお勧めは恐らく多くのシャッグス・ファンと同じく
1st収録の「My Pal Foot Foot」です。フットゥ、フッ。
、、、フットゥ、フッ(笑)。
高田漣
英文ライナーは御本人が語っていた!
高田漣
1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田渡の長男として生まれる。14歳からギターを始め、17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭蔵のアルバムでセッション・デビューを果たす。現在は、スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として細野晴臣、高橋幸宏、ハナレグミ、アン・サリー、畠山美由紀、Human Audio Spongeなどのレコーディングやライヴで活躍中。ソロとしても今までに5枚のアルバムをリリース。2008年には、高橋幸宏、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の6人で「pupa」を結成し、デビュー・アルバム『floating pupa』を発表している。同年、崔洋一監督によるショートフィルム「ダイコン」(小泉今日子主演)の音楽を担当。

