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『エドワード8世』『Misty Station』
月組トップスターの「きりやん」こと、霧矢大夢さんと、娘役スター蒼乃夕妃さんの退団公演となる『エドワード8世』と『Misty Station』を観に行ってきました。宝塚歌劇の舞台で、このふたりの麗しいお姿を拝見できるのは、あと1カ月足らずとなりました・・・。
『エドワード8世』『Misty Station』の公演プログラム。表紙は月組トップスター、霧矢大夢さん。
ミュージカル『エドワード8世』は、気さくで洒脱な人柄から、「プリンス・チャーミング」と呼ばれ、国民に親しまれた英国皇太子デイヴィッド・ウィンザーの物語。彼はエドワード8世として王位を継承しますが、その在位は、わずか1年――。なぜなら、気が強く自由奔放なアメリカ人女性ウォリス・シンプソン(出会ったときは人妻)との"王冠を賭けた恋"があったからです。ウォリスを選び、王位を捨ててしまったがゆえ、彼の弟であるバーディは、デイヴィッドとはまったく異なる内気で消極的な性格なのに王位を継ぐ羽目になってしまった、というのが、一昨年公開された映画『英国王のスピーチ』でした。
『エドワード8世』は、この史実をもとに、宝塚歌劇らしく脚色されたものですが、デイヴィッドは、そんなにもウォリスを愛していたのか? ウォリスの脳裏には、打算があったのではないか? などなど、このふたりや皇室との関係性には諸説あり、その真相は誰にもわかりません。が、ただひとつ確かなことは、彼らは、自分自身の意志で人生を選んだ、ということ。そして、何かを得るために、何かを失うことを怖れなかったということでしょう。
公演プログラムより。デイヴィッド(霧矢大夢さん/右)とウォリス(蒼乃夕妃さん/左)が結婚するシーン。
ふたりが結婚するシーン、ウォリスは、華やかなウェディングドレスではなく、ひざ下丈の淡いブルーのワンピースと小さなヘッドドレスという装いでした。その簡素さが、私には逆に、真実味あふれた重みのあるものとして感じられ、とても印象深かったです。確か、あのイネス・ド・ラ・フレサンジュが結婚したときも、シンプルなワンピース姿。"地に足のついた大人の結婚"といった感じで、いいなぁ~と思ったっけ。デイヴィッドとウォリスの結婚は、多くの人に祝福されたものではなかったけど、それこそ、社会の常識や世間体に縛られていない証拠。価値観は人それぞれなんだし、そんな生き方ができるふたりっていうのもいいなぁ~。物語の最後、次期トップスターの龍真咲さん演じるBBCのプロデューサー、ガイ・バージェスの「自分の人生の物語は、結局、自分で紡いでいくものなんでしょう」という言葉は、私たちひとりひとりに当てはまるものですね。
第2幕のブリリアントステージ『Misty Station』は、きりやんの"霧"をモチーフにつくられたショー。宝塚歌劇では慣例として、退団公演には、男役トップスターの名前をタイトルに入れ込むことがあるので、この公演名が発表されたとき、「あ~、きりやんはこの公演で退団してしまうのね・・・」と私たちファンは推測し、覚悟を決めるのです。「霧の終着駅」という副題がついたこのショーは、霧に包まれた駅のシーンからスタートし、霧の中に消えていくきりやんの姿で幕を閉じるという構成。寂しすぎます。
とはいえ、さよならモードのじめじめしたものではなく、まるでジャパニメーションの世界から跳びだしてきたような明るく元気なシーンが多く、それもまたきりやんとまりもちゃん(蒼乃さん)らしいな。特に、実写版『キャッツ・アイ』みたいなまりもちゃんのボンデージ風コスチュームとか、『チャーリーズ・エンジェル』みたいなバトル風の振付が、さすが娘役なのに"男前"といわれたまりもちゃん。クールです!!
公演プログラムより。時期月組トップスター龍真咲さん(左)、蒼乃夕妃さん(右)。
ショーの終盤近く、列車の椅子に座り、まどろんでいた客、きりやんに、駅員が「お客さん、そろそろ終着駅ですよ」と声をかけるシーンは、きりやん自身の宝塚人生の終演と重なり、胸に迫るものがあります。宝塚歌劇という場で輝きを放つ時間はあまりに短く、あまりに眩しく、私たち観る側にとっても、演じていた彼女たちにとっても、ひとときの幻のようなものなのかもしれません。
まりもちゃんとのデュエットダンスは、あの名曲『MY WAY』。「お疲れさま」そして「ありがとう」。そんな言葉をかけてあげたい。心からそう思える素敵な作品でしたし、宝塚歌劇を退いた後のきりやんとまりもちゃん、新生月組の進化を確信させられました。本当にお疲れさまでした。
